「うん、だからね。ゼロスが幸せなら、わたしはそれでいいよ」
ふわりと花の咲く様な笑みを浮かべて、コレットが後ろで両手を組んだ。
「コレットちゃんは優しいな」
ゼロスも観念した様な苦笑いをする。二枚目の彼がそんな顔をすると、ひどく情けなく見えた。
ゼロスがどうするつもりなのか、分かっていてコレットは言っているのだ、それを許すと。
天使の様ににこにこと微笑む彼女が、今やゼロスには小悪魔の様だった。ロイド君騙されてるよお前、まあ仕方ないんだけど。
ゼロスが何を考えているのか分かった様に、コレットはふふと小さく笑った。
「酷いねゼロス、」その割にコレットは未だ悪戯っぽい笑みを浮かべたままだ。それは肯定なのだろうか。ゼロスは笑った。「嘘吐け、」
「そんなことちっとも思ってないくせに」「ひどいね、コレットちゃんは」
くすくす、ふたりで笑い合う。何がそんなに可笑しいのだろう。何も可笑しいことなんか無いのに。(そう、強いて言うならばその事が可笑しいのか)
「ひどくなんかないよ。ゼロスこそ、さっき私は優しいって言ったのに」
ひゃひゃ、そう言えばそうだったな。ゼロスが思い出した様に言って、コレットがぷぅと頬を膨らませた。マッタく可愛らしいぜ畜生!ダマされてもいくらいだ。
「だってコレットちゃん、知らんふりするんだろ。どうせ」「そんなの当たり前だよ」
ロイドは知らない。何も知らない。可愛らしい幼馴染みの、こんな狡賢い一面を。くすり、ゼロスが口角を上げる。
「全く魔性の女だね、コレットちゃんは」
「ううん、それはわたしよりもセレスさんの方が似合うと思うな」
コレットもお返しとばかりに笑い返した。その言葉の意図するところはゼロスにも分かる。
「そいつは言えてる」
少し笑って、それで会話は終わった。ふたりは別れた。それぞれが反対の道へと進む。
すこし後にゼロスが死んだ。コレットはそれを見ていない。救いの塔でふたりは別れた。