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コレットは押し黙った。もう何も言えなかった。 ゼロスは黙って空を見つめている。自分より背の高い彼の瞳が、何を見ているのかコレットは知らない。普段は翡翠の青緑色をした瞳の色が、今は見えないのがただ怖かった。 時の流れが酷く遅い。そう感じるだけで実際は普段と何ら変わり無い筈なのに。 ゼロスの表情は見えなかった。空が、相変わらず青い。 赤い髪の毛をぼうっと眺めながら、ゼロス、と呟く。その後で、無意識のうちに出た言葉にコレットは自分で呆然とする。自分は今、一体、何を言おうと? 雲は緩やかに移動してゆく。風はそれほど強くなかった。ただゼロスの髪が少しだけ静かに揺れるくらいだった。 「…空、きれいだね」 沈黙は肯定ということなのだろう。こんなこと、同意する以外に何か返し方があるとも思わない。自分で言っておきながら何てつまらない。コレットは思って、ゼロスがそうしているように空の方へ目を向けた。ゼロスが視界から外れる。雲の少ない空からは太陽がくっきり顔を見せ、光はコレットの上にも降り注いだ。金髪がチカリ、と輝く。容赦なく地上を照らす太陽は目に痛くて、コレットは思わず双眸を細めた。 ふと気が付けば、空を見ていたはずのゼロスがコレットの方を向いている。元々空を見ていたわけでは無いコレットも、もう一度ゼロスに視線を戻してにこりと微笑んだ。そんなコレットを見て、ゼロスは満足そうに微笑んで頷く。 ふわりとゼロスの手がコレットの頭に触れ、光を集める金色の髪が、さらりと軽い音を立てた。 「やっぱりコレットちゃんは、笑ってる方がかわいいな」 そう言って優しく微笑む彼には、日頃の締まりのない表情は見えなかった。ただ美しく穏やかに微笑むだけ。 頭に乗せられた手が暖かくて、とても優しくて、コレットは思った。このまま時が止まってしまえばいい。(だって、こんなのは酷すぎる) いつかこの手も冷たくなるのだと(そしてそれがそう遠くは無いのだと)、思い出すともう何も言えなかった。 世界はいつだって冷たすぎる。体温はあまりに無慈悲だった。 |